
コミュ障で人見知り、運動オンチで体力がなく、記憶力も悪かった私が、大手金融機関に就職し、売上を伸ばすどんな秘訣を手に入れたのか? まだご存知でない方は、まずこちらをご覧下さい↓↓↓
2-3.まったく売れない・・・
景気が後退し、会社の業績が落ちてくると、利益を生まない間接部門には、スリム化のお達しが届きます。
「社内で油売ってないで、外に出て稼いでこい!!」
調査部門のトップは、他の本部部門の模範となり、率先して部員を営業店に出す決断をしました。
「調査部門の実力を発揮して、売上を上げてきてくれ!」
(大手金融機関の本部組織の中で、調査部門は伝統的にステータスが高いとされていました)
上司からの叱咤激励を受け、私を含め在籍期間が長かった数名が営業店に送りだされたのです。
ところが、4年半も営業の現場を離れていた間に、金融環境は様変わり。
さらに大企業のお客様も担当するようになり、戸惑うばかりでした。
それまでに担当していた中堅・中小企業や個人のお客様とは、感覚がかなり違いました。
当たり前ですが、大企業と中堅・中小企業では、金融機関に求めるサービスの内容が全く違います。
経済が低迷し金余りの中、外資系や証券会社などあらゆる金融機関が、優良な大企業のお客様に営業をかけていました。
甘い砂糖にアリが群がるように・・・
しかも、金融商品はお金でできています。色や形がなく、何が違うのかよくわかりません。
だから、どの金融機関と取引をしようが、金融商品自体にはほとんど差がないのです。
結果、厳しい価格競争に陥ります。
つまり、取引してもほとんど利益がでない。ときに赤字のときすらある。でも、取引しなければ、お客様から相手にすらされなくなってしまう。
そんな厳しい過当競争の真っ只中に、ポ~ンと私は放り込まれたのでした。
実は後で知るのですが、そうした大企業取引のスキルを持った人材がおらず、その営業店の業績はかなり落ち込んでいました。
私が着任した半年後、大企業取引の歴戦のプロである上司が転勤してきて、ゼロからいろいろと教えてもらいました。
しかし、まったく売れない・・・😱
「何かお役に立てることないですか?」🙏
「いや、別に・・・」
御用聞き営業では、バッサリお断りされてしまいます。
バブル崩壊前なら、頻繁に顔を出していれば、そこそこ成約できたのですが・・・
何も成果がでないまま、早くも1年が経とうとしていました。
昔のやり方が一切通用しない。何か変化が必要でした。
実を言うと・・・
競合他社がほとんど対応できていなかった必殺技?が、私には1つありました。
当時は景気の先行きが不透明で、どの上場企業でも経費削減が至上命令。
特に利益に直接貢献しない間接部門のスリム化が急務とされていました。
(私が営業の現場に戻されたように)
私が担当していた大企業の折衝窓口は財務部や経理部などの間接部門。
大企業は組織がデカすぎて、自分の会社がどういう状況なのか、外から見るとどう見えるのか、社員の一部を除いて、意外にわかっていないものです。
(自分の会社の状況をわかってないのは、金融機関の社員も同じですが💦)
私は調査部門に長くいたお陰で、お客様の企業が置かれているビジネス環境や業界動向、競合関係、各事業部門の課題と解決策を、財務部や経理部の社員の方よりも、わかりやすく、具体的なデータを使って話すことができました。
「経費削減をいつまでに、どれくらいやるのか? 早急に案をまとめて出してくれ!」
どの大企業であっても、間接部門の担当役員は役員会などで詰められ、悩んでいるだろうと、容易に予想できました。
私は、そうした大企業の課題や悩みを知っていました。
また、金融機関と企業の会計システムをネットワークで結ぶことで、手作業で時間がかかっていた様々な経理事務を効率化・合理化できることも知っていました。
業界新聞や業界専門誌の記事に書いてあったからです。特集も組まれていました。
しかし、競合する金融機関の営業担当者には、大企業が使っている会計システムについて、システム部門と交渉できるほどの専門的な知識を持つ人材はいなかったようです。

多くの企業の財務・経理の担当者が、私の話に興味を示しました。
というのも、担当役員だけでなく、管理職、事務職員まで、経理事務のありえないほど単純な手作業の多さに、ほとほと嫌気がさしていたからです。
もし、企業と金融機関がネットワークで結ばれれば・・・
「仕事が楽になる!!」
今では当たり前ですが、当時はまだ夢のような話でした。
さらに・・・
お客様は新しいものが大好きです。
「財務・経理部門が旗を振り、新しい挑戦に取り組み、社内の事務作業を合理化・効率化を推進し、全社の業績向上に貢献する」
まず、財務・経理部門の社員の方々に、このストーリーを話し、理想を実現する価値を実感してもらうことから始めます。
もし、こんな夢を実現できたら、会社はどうなるでしょう?
もし、この挑戦に成功したら、他の人からどう見られる?
結果、ご自身の社内の評価はどう変わるか・・・
それとなく想像してもらいます。
財務・経理部門の担当者は、自分で納得すると、直属の上司の課長や部長に、折をみて、このストーリーを話します。
すると、課長や部長は、機会を見計らって、担当役員に話します。
会社全体がよりよくなるストーリーを黙っていることはなかなかできないからです。
いろいろ不満はあっても、基本的に誰もが自分の勤めている会社が好きです。
できれば、何らかの形で自分も貢献したいのです。
会計システムはわかりやすいほんの1例ですが・・・
競合他社では、まだあまり取り扱いのない金融商品サービスをネタにして、お客様とのアポを取るようにしました。
金融機関に限らず、例えば、高級ブティックや高級エステサロンなどのファッション・美容業界では、店頭にある通常の商品サービスとは別に、VIPのお客様専用の超高級な商品サービスを隠しています。

上得意のお客様が来店したときだけ、それを店の奥からコッソリ出してきて、ささやきます。
「こちらは、○○様のような特別なお客様にだけに、ご用意しているもので・・・」
お客様は特別扱いされるのも、大好きです。
「じゃあ、1ついただこうかしら・・・」
みたいな感じで、高額商品がアッという間に売れます。
不動産屋さんでも、一般のお客様には公開していない超目玉物件ってありますね?
金融機関にも、特別なお客様向けの旬な商品サービスがあったりします。
ただ、そういう特別な商品は、本部の担当者にお願いしないと教えてもらえません。
だから、本部の様々な部署の担当者とのコネクションを作り、よい情報を流してもらえると、競合他社と比較されなくなり、営業がずいぶん楽になります。
すぐに成約することは少ないですが、オートクチュールの最高級ブランド品のように、お客様の興味をひき、話を聞いてもらいやすくなります。
何回か続けると、お客様は私の訪問を楽しみに待ってくれるようになります。
そんな関係を作りつつ、実際にお客様が困っていること、悩んでいることを聞いていきます。
ソリューション営業や提案営業と言われるスタイルです。
売れる、売れないは、最初の段階では、実はどうでもいいのです。
まず、私の存在を知っていただかなければ、私は存在しないのと同じです。
また、商品の存在を知っていただけなければ、その商品は存在しないのと同じです。
売る前に、まず知っていただくことが最優先。
そして、おすすめする順番は、お客様がお望みの商品サービスよりも、1~2ランク上のものからです。
あるいは、今は必要なくても、将来必要になる商品サービスもご案内します。
すぐには決まらなくても、いくつかの案件を進めるうちに、お話する回数が増えて、お客様との信頼関係が深まっていきます。
世の中は変化しているので、ある時点では必要でなかった商品が、だんだん必要になってきます。
例えば、お客様の同業他社が先に導入したりするからです。
2-4.人が行動してしまう根源的な欲求とは?
私はこれを「いつかはクラウン」作戦と呼んでいました。

当時、トヨタの最高級車はクラウンでした。
現状よりも高い理想と、それを手に入れるための実現可能なステップを知ってしまうと、いつかきっと手に入れたいと、人は思うようになります。
その実現のために、一歩、一歩、具体的な行動をとるようになります。
これは法人も個人も一緒。法人は人が集まったものだからです。
人間の本能なので、止められません。
理屈では説明できないのです。
実をいうと・・・
神話やストーリーが、人間の心をつかみ、組織内の人から人へと語り継がれるコミュニケーションの形式であるため、アメリカでは、ストーリーがマーケティングや営業に活用されていることを、私は知っていました。
大学時代に研究していた神話が昔話が、ビジネスでも役立つとは、もうビックリ!!
(とても深い話なので、もし機会があれば、またお話ししたいと思います)
当時の金融業界では、ほとんどの商品サービスに明確な差別化要素がなく、コモディティ化していました。
どこから買っても、ほとんど違いがわからないトイレットペーバーのようになっていたのです。
そういう状況では、マーケティングや営業に注力して、成約したとしても、利益はほとんど出ません。
逆に成約しなければ、マーケティングや営業コストで赤字になります。
しかし・・・
「お客様の理想の実現をサポートする商品サービスはこれです!」
と、お客様がまだ気づいていない根源的な欲求に火をつけると、その商品サービスはお客様にとって特別な価値をもつものとなります。
その理想の実現がもたらす価値が商品サービスの価値となります。
商品を売るな! 夢を売れ!
これは、とても重要です。今すぐにメモしてください。
テストに出ます!!!笑
なぜなら、現在では、市場の縮小により、ほとんどすべての商品サービスが供給過多で、コモディティ化しています。
だからこそ、商品サービス自体ではなく、商品サービスにより実現するお客様の理想の価値に焦点をあてて、ストーリーを語るマーケティングや営業のスキルが重要です。
しかも、人間の根源的な欲求に働きかけるため、大企業から個人商店まで、B to BでもB to Cでも、ネット販売でも店舗販売でも、あらゆる取引で使えます。
「金融商品なんて、どこから買っても同じでしょ?」
(そうそう、ホントその通りです😅)
と、冷ややかだったお客様が・・・
「金融商品のことなら、まず○○に相談だ!」(○○は営業担当者や店舗の名前)
とか
「金融商品はどこから買っても同じだから、よし! ○○から買おう!」
と思ってもらえるようになります。
こうしたソリューション営業を、コツコツやり続けた結果、最初は全く相手にされていなかった私が、お客様の方からお電話をいただけるようになりました。
お客様のファースト・コール窓口になったのです。
例えば・・・
「しのきさん、前に話していたアレ、今度、部長に説明してもらえますか?」
「はい、ありがとうございます。いつお伺いすればいいですか?」
1週間後・・・
「しのきさん、例の件、常務にも説明してもらえますか?」
「はい、もちろんです。どうもありがとうございます。いつお伺いすればいいですか?」
数か月後には、ほぼ毎日、いろいろなお客様からお電話をいただけるようになり、それに比例して、成約数も次々と上積みされていきました。
その結果・・・
私がいた営業店は、2位以下を引き離しダントツで業績トップとなり、社内表彰されました。
そのお祝いの飲み会の席で、ビールをうまそうに飲んでいた営業店長の満面の笑みを未だに覚えています。
業績不振店に転落する一歩手前からのV字回復だっただけに、喜びもひとしおだったでしょう。
当時は、無理な営業による不正行為を防止するため、個人別の営業成績は発表されていませんでした。
ただ、かなり手応えを感じていたので、業績2位の営業店の収益の増加額をみたら、私が増やした収益額の方が多かったのです。
担当者レベルでは、実質トップになったのだなぁ・・・
もちろん、私1人の成果ではなく、営業店全員と本部スタッフがチーム一丸となって、お客様の夢の実現をサポートするため、全力を尽くした結果です。
(私が苦手な接待は、上司たちがやってくれていました)
とにかく、コミュ障で、運動オンチで、酒も飲めず、接待できない私でも、お客様の夢の実現をサポートすれば、かなり成果を残せることがわかりました。
しかし、種をまいて育てた果実を刈りつくしてしまい、自分の担当先にはもうペンペン草も生えない・・・
これから、どうしたらいいのだろう?
と悩んでいた矢先、突然異動になりました・・・
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